2011年2月28日月曜日

パウロ研究と宣教学的解釈論

今日で二月も終わり。
二月最後のポストの題がかなりいかめしいものになってしまいました。

右サイドバーの「マイ・ブログ・リスト」には入っていませんが、常時閲覧している「聖書学・神学」関連のブログは10個近くあります(殆んど英語ブログ)。
今日はその中の一つ、アメリカの新約聖書学者のマイケル・ゴーマン教授のブログ
Cross Talk
の最新ポスト
Missional Musings On Paul
を紹介します。
※カタリストという雑誌に寄稿した小論ですが、リンクの方は最新ポストをご覧ください。

最近の新約学の動向として「パウロ研究」と「宣教学的解釈論」が近寄って興味深い研究が形成されつつある、と言うレポートです。

宣教学的解釈論とは宣教学でもなく解釈学でもない。それは宣教学者と聖書学者が協働して聖書に示されている「神の宣教」を探索し、その宣教に参画することだ、とゴーマン教授は言います。

Missional hermeneutics is neither the same as missiology nor the same as hermeneutics as it has been normally practiced. Rather, missional hermeneutics is what happens when missiologists and biblical scholars intentionally work together to probe the biblical text for what it says about the missio Dei and about our participation in it.

もともとミシガン州にあるウェスタン神学校の「福音書と文化ネットワーク」が始めた「宣教的解釈論フォーラム」が北米聖書学会と共同するようになって発展してきた研究テーマのようです。

パウロを宣教師として捉え、パウロ書簡を宣教的(ミッショナル)文書として捉え直すと、その理解は単に釈義的な理解や、歴史的理解に留まらず、解釈論的地平に私たちを導き入れる。そうすることによって
we need to read Paul’s letters in two ways: first, as witnesses to Paul’s understanding of God’s mission, his role in it, and the place of his congregations in it; and, second, as scriptural texts for our own missional identity, our contemporary vocational and ecclesial self-understanding and practices. Thus is born a Pauline missional hermeneutic.
と言う視点が開けてくる、と言うのです。

このような解釈論的視点はさらに次のような問いを導き出す。

(1) What was and is the relationship between the church’s deepest convictions and the shape of individual and corporate Christian existence? 
(2) What kind of existence in the world is faithful to the gospel, and specifically to the story of Jesus?
(3) Why and how does such an existence both attract some and repel others?
(4) How does Christian speech and behavior, seen as an integrated whole, relate to and reflect what God is doing in the world (the missio Dei) as manifested in the story of Jesus, which is itself grounded in the story of Israel?

如何にパウロ書簡を読むかと言うことは、如何に「神の宣教」を理解し、パウロの時代だけでなく、現代の私たちが「神の宣教」に参画していくことに繋がる実践になる、と言うことです。

「平和」の問題や、「環境」の問題も、個々の釈義的・倫理的な課題としてではなく、「神の宣教」の視点から包括的に取り組まれるようになる。

このようなパウロ書簡の読まれ方は従来の伝道を否定するのではなく、拡大し、さらに広い視野で私たちの実践を方向付けてくれるようになるだろう、とゴーマン教授は期待しています。

ゴーマン教授の小論は「パウロ書簡」と「神の宣教」についてですが、既にクリストファー・J・H・ライト(N・T・ライトがジョークでO・T・ライトと呼ぶ)が
The Mission of God: Unlocking the Bible's Grand Narrative (IVP Academic, 2006)
を出版していますが、旧約聖書から始まって全聖書を「神の宣教」の視点から包括的ナレーティブと捉える本を出しています。
ツイ友の関西聖書神学校、鎌野直人先生によりますと、来年邦訳出版されるとのことです。(鎌野先生も訳者の一人)
是非お金をためておいてください。必読の書です。

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