2016年2月8日月曜日

(5)ホィートン論争、その1

「ホィートン論争」といってもジャーナリスティックな見出しでそう言う風に言われているわけで・・・、筆者が論争っぽく書こうとしているわけではありません。


(1)発端
 遡ること昨年の12月、サンバーナディーノ銃乱射事件の影響で、北米でのイスラモフォビアが大統領候補指名選挙での度重なる過激な移民排除発言などにも煽られて過熱気味になっていた。

 そんなとき、待降節を迎えて何かそんな刺々しい状況に融和と和解のメッセージと行動を示そうとした一人の大学教師がいた。

 福音派のハーバードと呼ばれる、イリノイ州にあるホィートン大学の黒人で女性という二重にマイノリティーの背景を持つ、ラリシア・ホーキンス政治学准教授がその人だった。

 彼女はイスラムとのソリダリティー(連帯)を示すため、頭にヒジャーブ(スカーフ)を被り、教皇フランシスの発言も引用しながら、「クリスチャンとイスラム教信者とは同じ神を礼拝している」と自分のフェイスブックにメッセージを書いた。

(2)大学当局(アドミン)指導部の反応
 ラリシアのメッセージは大学指導部にたちまち危険信号となって伝わり、彼女は有給停職処分を受け、彼女の発言が大学の「信仰的立場」に抵触しないか審査する手続きに入る、という指導を受けた。

 しかしラリシアはテニュアー(かなり有利な雇用)待遇の身であったことから、彼女の行動や発言の是非とともに、このような大学側の一方的な指導に対する批判も各方面から沸きあがった。

※以上の経過を、神学的な問題へのコメントも合わせて掲載した初期の記事の中で、NPR (National Public Radio)の、
 Do Christians and Muslims Worship the Same God?
を挙げておく。

日本での報道は殆どなく、業界ニュースである<CJC通信>の、2016年1月12日付け記事「アラーとイエスは同じ神か?米大学で論議」が見つかるくらいである。
(3)メディアによる論争の拡散

 メディアでの論争の拡散について書く前に、筆者が最初にこの“事件”をやや自覚的に認識したのは、ツイッターでフォローしているTobin Grantが書いた記事(2015年12月16日)であったことを紹介しておく。

 トビンはホィートンの卒業生であり、政治学分野で活動している業界人として、この“事件”の動向の如何に格別神経を尖らせていた人物で、その後意を同じくする政治学業界の同窓生らを取りまとめて、ホィートン大学当局に「処分の見直しと和解を勧める」公開書簡(2016年2月2日)をウェブ掲載した。

 さてこの辺で「続き」とするが、この事件は残念ながらラリシア・ホーキンス准教授がホィートン大学を退職する方向で収束したものと報道されている。

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