2011年10月3日月曜日

ビブリシズム(聖書主義)

暫く遠ざかっていました。
もう更新しないでいるうちに一週間経ってしまいました。
風邪気味で体調が今ひとつ、なかなか考えもまとまらず迷っているうちにこうなってしまいました。

と言い訳のような前置きはそれまでにして、今回は最近購入した本の感想を書こうと思います。(まだ三分の一位までしか進んでいないので途中経過、と言うことになりますが。) 
Christian Smith, The Bible Made Impossible: Why Biblicism Is Not a Truly Evangelical Reading of Scripture.
副題でビブリシズムという言葉が使われています。悪い意味(反知性的で、過剰な聖書の権威に対する信仰と言ったニュアンスがあると思います)で使われることが多いのですが、著者のクリスチャン・スミスは福音主義を始め多くのプロテスタント、特に保守的な信仰者・団体に共通してみられる「聖書に対する一定の態度」を表す用語としています。

先ずはそのビブリシズムをどう定義しているかと言うと
By "biblicism" I mean a theory about the Bible that emphasizes together its exclusive authority, infallibility, perspicuity, self-sufficiency, internal consistency, self-evident meaning, and universal applicability.
まあこれだけだと分かりにくいと思いますので一つ例を挙げます。
福音派のキリスト教に基づく大学である「東京基督教大学」の信仰規準(リンク)では次のように謳われています。
66巻からなる聖書は、聖霊の完全な霊感によって、それぞれの著者を通して、記されたものです。したがって、聖書の記述には、誤りがありません。聖書は、神が救いについて人々に啓示しようとされたすべてのことを含み、信仰と生活との唯一、絶対の規範となるものです。
これはかなり簡単な文章ですが、ビブリシズムで定義されたうちの、①唯一絶対の規範、②無誤性、などは明瞭に表現されています。
③十全性、④意味の自明性、⑤統一性などは少し表現は違いますが、例えば「ウェストミンスター信仰告白」の一番最初の条項である「聖書」に関する説明の文章に注意深く定義されながらも表されていると思います。(リンク

何はともあれ社会学者スミスにとってのビブリシズムの関心は、単に組織のタテマエとして表明されていることに限らず、実際にそのような聖書に対する態度を持っている人たちが実際に示す意見の表明や行動から推し量られる総体としての現象です。

少し蛇足になりますが、プロテスタントの団体・組織がその「信仰規準」について表明する時に、従来の歴史的信条での骨格的内容となる「三位一体の神」についての条項は、「聖書」についての条項の後に来る、と言うこと自体にプロテスタントの信仰原理である「聖書のみ」の重要性が如実に示されてと言えます。

さてスミスはビブリシズムのような態度を前提させている事柄を10個挙げていますので、それを列挙してみます。(以下はジーザス・クリードのスコット・マクナイトのダイジェスト版です。リンク
1. Divine Writing: the Bible is identical to God’s own words.
2. Total representation: it is what God wants us to know, all God wants us to know (he quotes J. I Packer here) in communicating the divine will to us.
3. Complete coverage: everything relevant to the Christian life is in the Bible.
4. Democratic perspicuity: reasonable humans can read the Bible in his or her language and correctly understand the plain meaning of the text.
5. Commonsense hermeneutic: again, plain meaning; just read it.
6. Solo [not sola] Scripture: we can read the Bible without the aid of creeds or confessions or historical church traditions.
7. Internal harmony: all passages on a given theme mesh together.
8. Universal applicability: the Bible is universally valid for all Christians, wherever and whenever.
9. Inductive method: sit down, read it, and put it together.
10. Handbook model: the Bible is handbook or textbook for the Christian life.
先ほどの定義より幾らか説明がついて分かりやすくなっていると思いますが、どちらにしてもアメリカの保守的キリスト者、特に聖書の権威を高調する福音主義者たちの信仰生活の中でどのように聖書が読まれ、用いられているか・・・の概観を示しているのではないかと思います。
もちろんこのような現象は日本の同様の背景を持つ信仰者たちにもかなりな程度で現れていることと思います。

著者が主張するのは、このような聖書への態度・理論(ビブリシズム)は基本的にも、論理的にも維持不可能であり、また実際面でも「多様で広範な聖書解釈の多元性(pervasive interpretive pluralism)」の問題を起こして、様々な対立や意見の相違から分裂や離反を繰り返す、教会の不一致の原因になっている、というものです。

筆者が今まで読んできた中では、著者の言わんとしていることは概ね当たっていると思われます。ただ聖書のテキストの多義性の問題と、実際に聖書学者や神学者たちが異なる解釈や見方(例えば「贖罪論に関する四つの異なる見方」のような現象)に至ることに直接の因果関係があるように著者が考えているとしたら、それは少し論理の飛躍ではないかと思うのですが・・・。

何はともあれまだ途中なので先ずはこの位の紹介でとどめておくことにします。

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