2011年12月27日火曜日

マコト・フジムラ『四福音書挿絵』展

タイトルの付け方が『四福音書挿絵』展でいいのかどうか。
開催している日本橋高島屋は「マコト・フジムラ展ーホーリーゴスペルズー<日本画>」と広告しているが・・・。

今こう書いている時間から間もなく展示は終了するから、この記事を投稿しても読者が足を運ぶことがないのは残念である。

既にこの展覧会のことは聖書2題聖書2題追記で書いているので参考にしていただきたい。


さて実際に筆者が行って来て見た感想である。

26日の午前中に行ったのだが、25日の翌日と言うこともあったのか展示会場はがらんがらんであった。
余り人混みは好きではないし、絵の展覧会に行くと言うこともめったにないので、このような状況はまさに『お一人様用展覧会』で千載一遇のチャンスであった。

入り口左側には皮装丁とキャンバス布装丁のサンプルが置いてあったが、既に両方ともSold Outになっていた。
ぱらぱらとページをめくってみたら意外にあちこちにスケッチ的な絵や描写が配されていて字と絵の空間配置が面白い。

その次には長ーいテーブルの上に四福音書各章の冒頭の言葉の第一文字目のアルファベットを絵にしたものが横に長く並べられている。
それはAであったり、Oであったり、Kであったり、様々である。
四福音書全部で89章になるわけだからかなり同じ文字がダブるわけだが、見た感じ同じ文字でも印象は結構異なる。

一つの絵のサイズは20センチ四方位だろうか、キャンパスから溢れる位の文字と色彩背景である。
マコト・フジムラの画風は(専門家ではないのでいい加減なことしか言えないが)日本画を背景にしたモダンアートだと見える。
単なる抽象画ではなく、色彩をベースにしたスペース・ファンタジーとも言うべき世界を作っている。

これら89枚の絵は殆んどそう言う絵なのだが、与件によりアルファベット文字だけは認識されなければならない。
それらの文字は薄い金箔の線で描かれることもあれば、殆んど線とは認識されない太い筆で絵の具をびしゃっと殴りつけたような形象の組み合わせもある。

89枚もアルファベットを中心にしたテーマの絵となるとどうしても似た感じと言うか同じアイデアやデザインの流用みたいなものが出てきても良さそうだが、筆者の見る限り一枚一枚が絵のデザインとして独立している。

日本画・水墨画では余白と言うものが重要な絵の構成要素であるが、これら89枚の中に色のない余白が用いられていたのはほんの一枚か二枚であったろう。
既に書いた「太い筆で絵の具をびしゃっと殴りつけたような形象」のNだけではなかったか・・・。

次に中型サイズの絵が何枚か壁にかけられていたと記憶するが、入り口右側に掲げられた四福音書それぞれを象徴するテーマの大きな絵四枚の印象に消されてしまったようなのでこれらの中型絵についての感想はあきらめる。

さて四福音書をそれぞれ象徴する大判サイズの絵は大きさが縦横それぞれ1.5メートル位はあろうか、縦長だがこちら絵の号数とかそういうことは良く分からないので大きさについては勘弁願おう。
テーマとなっているのはマタイから順に言うと「野の百合(Consider the Lilies)」、マルコが「燃え上がる炎(Water Flames)」、ルカが「放蕩なる神(The Prodigal God)」、ヨハネが「初めに(In the Beginning)」である。

ぱっと見一番分かりやすいのはマタイ。
うっすらと百合の花が白っぽい水色の背景から浮き上がっている。

マルコも分かりやすいが、炎の赤の鮮烈さが何を指すのか・・・。

ルカは15章の「放蕩息子(The Prodigal Son)」をもじった題名になっている。
印象としては地平線を境に地上と空とが白絵の具で描写された形象で覆われ「和解」をイメージさせる。
興味深いのは近寄ってみると細い線で金箔文字(文章になっているようだ)が沢山何行にも渡って書かれていることだ。

ヨハネはタイトルからも想像できるが、筆者の目にはビッグ・バンの宇宙空間を連想させた。
四枚の中では一番重量を感じさせる色彩であり、荘厳さを醸し出している。

他の三枚は意外と軽やかで透明感を感じさせ、スペースの広がりや伸びやかさを感じさせる。
ただマルコの炎はちょっと違う感じだが。
むしろモーセが荒野で神の顕現に出合ったと言う「燃える柴」を連想させる。

とまあ、何ともグータラな感想記だが、何せアートに触れる機会の少ない素人なので頓珍漢な部分が殆んどだろうが適当に読み流して頂きたい。

最後に読者のために筆者の見た絵をネットで観覧できるサイトを紹介して終わりにする。
Dillon Gallery, Makoto Fujimura "The Four Holy Gospels"

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